股関節は、骨盤の臼状のくぼみに大腿骨の球状の先端がはまり込んで関節をつくっています。
大腿骨の球状の部分が骨盤のくぼみ内をスムーズに回ることで滑らかな股関節の動きが可能です。
球状の関節なので3D方向に立体的でダイナミックな動きも可能ですが、動作が少し複雑です。
股関節の基本動作を学び、まずは一つ一つの基本動作の柔軟性を上げていきましょう。
基本動作を組み合わせることで、実際のスポーツ動作のパフォーマンスが上がっていきます。
股関節の柔軟性を高めるためには、脚を前後に動かす屈曲と伸展、脚を外に開く・閉じる動作の外転と内転、脚を外・内に捻る外旋と内旋の6つの動作を意識するとよいでしょう。
脚を前後に動かす動作
股関節の屈曲
太ももを体の前の方に挙げる動作です。
この時、もも裏のハムストリングスやお尻の大殿筋が伸長してストレッチされ、逆に股関節前面の腸腰筋や大腿直筋などの筋肉が収縮しています。
主に脚の背面(青色マーク)の筋肉が伸長して、前面の筋肉(赤色マーク)が収縮することで股関節の屈曲動作が行われています。
太ももの裏の筋肉の柔軟性が低く、太ももの前の筋肉の筋力が弱いと、ハイキックのような脚を高く挙げる動作の関節可動域が小さくなります。
股関節の屈曲動作の柔軟性の評価
仰向けの姿勢で脚がどのくらい挙がるか、立位体前屈の際の指先と床の距離などで太ももの裏の柔軟性を評価することができます。(前屈はもも裏の筋肉だけでなく、ふくらはぎやお尻、背筋の柔軟性も関与しています。)
硬い場合 | 柔らかい場合 |
ハムストリングスや殿筋が硬い場合は、指先が床から大きく離れてしまいます。
硬い場合 | 柔らかい場合 |
ハムストリングスや殿筋が硬い場合は、脚が90度よりも高く挙がっていきません。
股関節の屈曲の動作を大きくするためのストレッチ
股関節の屈曲の動作を大きくしたい場合は、もも裏のハムストリングスや殿筋をストレッチしていきます。
ハムストリングスは、仰向けの姿勢で脚を挙げたり、床に座った姿勢から上体をたおすことで筋肉の伸ばすことができます。
画像をクリックするとストレッチの方法のページに移動します。
- もも裏の筋肉が心地良く伸びているところまで上体を傾け(または脚を挙げて)、15秒~30秒ほどキープしてください。
- 上体を傾ける際は反動をつけず、ゆっくりと動作を行います。
- ポーズをキープしているときは呼吸を止めないよう注意してください。
- 今よりも柔軟性を向上させたいのであれば、ストレッチを2セットは行い、1セット目よりも2セット目の方が動きが大きくなるよう意識して動作を行なっていきましょう。
- 急性期の肉離れや打撲などの怪我がある場合はストレッチを行わないでください。
股関節の伸展
脚を後ろの方に伸ばす動作です。
伸展動作を行った時は、背骨前面〜骨盤前面の腸腰筋や太腿前の大腿直筋が伸ばされています。反対側の太もも後面のハムストリングスや骨盤後面の大殿筋が収縮しています。
腸腰筋や大腿直筋の柔軟性が低く、ハムストリングや大殿筋の筋力が弱いと、股関節伸展の関節可動域は大きくなりません。
股関節の伸展動作の柔軟性の評価
腸腰筋の柔軟性は、仰向けに寝た姿勢で片一方のひざを抱え込み、下の脚の太ももがどのくらい持ち上がるかで柔軟性を評価します。
この評価方法は自分自身で行ってもわかりにくいかもしれません。片ひざ立ちから骨盤を前に移動した際の太ももの角度を確認してもよいでしょう。
硬い場合 | 柔らかい場合 |
腸腰筋が硬いと、仰向け姿勢で右ヒザを深く抱え込んだ際に、左脚が浮いてきてしまいます。
硬い場合 | 柔らかい場合 |
腸腰筋が硬い場合、片ひざ立ち姿勢となり骨盤を前に移動したときに、後ろ脚の太ももがあまり傾きません。硬い場合と柔らかい場合の写真とを見比べると、後ろ脚の太ももの傾き具合と、骨盤の位置の高さの違いがわかります。
股関節の伸展の動作を大きくするためのストレッチ
股関節の伸展の動作を大きくしたい場合は、腸腰筋や大腿直筋をストレッチしていきます。
腸腰筋と大腿直筋は、片ひざ立ちの姿勢から骨盤を前に移動して股関節を伸展させたり、四つん這いの姿勢から骨盤を床の方に沈めて股関節を伸展させるとストレッチすることができます。
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下記の注意してもも前〜骨盤前のストレッチを行なっていきましょう。
- もも前〜骨盤前の筋肉が心地良く伸びているところまで骨盤を動かし、15秒~30秒ほどキープしてください。
- 骨盤を動かす際は反動をつけず、ゆっくりと動作を行います。
- ポーズをキープしているときは呼吸を止めないよう注意してください。
- 今よりも柔軟性を向上させたいのであれば、ストレッチを2セットは行い、1セット目よりも2セット目の方が動きが大きくなるよう意識して動作を行なっていきましょう。
- 鼠径部に痛みや違和感が出るときは中止しましょう。
脚を外に開く・内に閉じる動作
股関節の外転
脚を体の外の方に開いていく動作です。
外転動作の際は、太ももの内側の内転筋群が伸ばされ、骨盤後面〜側面についているお尻の殿筋群や大腿筋膜張筋が収縮しています。
内ももの筋肉柔軟性が低く、殿筋群の筋力が弱いと、股関節外転の関節可動域が小さくなってしまいます。
股関節の外転動作の柔軟性の評価
硬い場合 | 柔らかい場合 |
股関節の外転動作が硬い場合、左右の足の裏を合わせたアグラの姿勢でひざが床から大きく浮いてしまいます。柔らかいとひざが床の方に落ちていきます。
この姿勢で骨盤が後ろにたおれてしまう場合は、殿筋群やハムストリングスも硬いことが多いです。
股関節の外転の動作を大きくするためのストレッチ
股関節の外転の動作を大きくするためには、内転筋群のストレッチを行なっていきます。
床に座って一方の脚を広げて前屈する。左右両方の脚を外に広げて前屈する。床に座るのが苦手な場合は壁を使って開脚したり、立った姿勢で四股のようなポーズでストレッチしていきます。
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下記の注意して内もものストレッチを行なっていきましょう。
- 内ももの筋肉が心地良く伸びているところまで上体をたおし、15秒~30秒ほどキープしてください。
- 反動をつけず、ゆっくりと動作を行います。
- ポーズをキープしているときは呼吸を止めないよう注意してください。
- 今よりも柔軟性を向上させたいのであれば、ストレッチを2セットは行い、1セット目よりも2セット目の方が動きが大きくなるよう意識して動作を行なっていきましょう。
- 鼠径部やひざに痛みや違和感が出るときは中止しましょう。
股関節の内転
脚を内側に閉じていく動作です。
お尻の殿筋群が伸ばされ、太ももの内側の内転筋群が収縮しています。
殿筋群の柔軟性が低く、内転筋群の筋力が弱いと股関節の内転動作の関節可動域が小さくなってしまいます。
股関節の内転動作の柔軟性の評価
硬い場合 | 柔らかい場合 |
殿筋群や大腿筋膜張筋が硬い場合は、写真のように横向きに寝た姿勢から上の脚を下に降ろそうとしても脚が落ちません。(内転していきません。)柔らかい場合は脚が床の方に降りていきます。
股関節の内転の動作を大きくするためのストレッチ
股関節の内転動作を大きくするためには、殿筋群や大腿筋膜張筋のストレッチを行なっていきます。
床に座った姿勢で一方の脚をクロスさせ、膝を内側にたおして股関節を内転させると殿筋群をストレッチすることができます。
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下記の注意して骨盤の横〜ももの横のストレッチを行なっていきましょう。
- お尻〜骨盤横〜ももの横の筋肉が心地良く伸びているところまでヒザを内側にたおして、15秒~30秒ほどキープしてください。
- 反動はつけずに、ゆっくりと動作を行います。
- ポーズをキープしているときは呼吸を止めないよう注意してください。
- 今よりも柔軟性を向上させたいのであれば、ストレッチを2セットは行い、1セット目よりも2セット目の方が動きが大きくなるよう意識して動作を行なっていきましょう。
- 股関節にツマリ感や違和感が出るときは中止しましょう。
脚を外・内に捻る動作
股関節の外旋
太ももから脚を外側に捻る動作です。
深層外旋六筋というお尻の深部の方にある筋肉、大殿筋、縫工筋が収縮してい股関節の外旋動作が行われています。
股関節の外旋動作の柔軟性の評価
硬い場合 | 柔らかい場合 |
股関節の外旋動作が硬い場合は、写真のように仰向けでひざを外に開いたときに、ひざが床から大きく浮いてしまいます。この動作の動きの小さい人は内転筋群も硬いことが多いです。
股関節の外旋の動作を大きくするためのストレッチ
画像をクリックするとストレッチの方法のページに移動します。
股関節の内旋
太ももから脚を内側に捻る動作です。股関節の内旋は、内側ハムストリングスと薄筋が収縮することで行われています。
股関節の内旋動作の柔軟性の評価
硬い場合 | 柔らかい場合 |
股関節の内旋動作が硬いと、写真のようにひざを内股にたおしたときに、ひざが床から大きく浮いてしまいます。ひざを内股にたおすときは骨盤が浮かないように注意してひざをたおしてください。
股関節の内旋の動作を大きくするためのストレッチ
画像をクリックするとストレッチの方法のページに移動します。
股関節の外旋・内旋動作の柔軟性を高めるためのストレッチ
股関節の外旋と内旋動作を大きくするためには、アグラ姿勢のようなストレッチで外旋動作を、内股姿勢のようなストレッチで股関節の内旋の動きを徐々に大きくしていきます。
開脚の姿勢で太ももを外・内に捻る動作でも股関節を捻る動作の可動域が大きくなっていきます。
さいごに
開脚の柔軟性向上のために、股関節の外転や外旋ばかり強調したプログラムも目立ちますが、外転や外旋動作の対となる内転・内旋動作が硬くなってしまい、肉離れや腰痛などの怪我をしてしまったり、かえってスポーツのパフォーマンスが落ちてしまうケースも多く耳にします。「股関節が柔らかい=脚が開く・開脚が柔らかい」ではありません。
体が硬い人は、いきなり開脚前屈やY字バランスなどの大きな動作のストレッチを行わないで、まずは6つの基本動作の柔軟性を上げていきましょう。
「股関節を外旋させながら屈曲していく」、「股関節を外転・外旋させながら屈曲させていく」、など、基本動作を組み合わせていくことで、開脚前屈やY字バランスの柔軟性も自然と上がっていくでしょう。