ダンスや新体操、バレエなどをやっている人は、演技の振り付けの中で前後開脚(スピリッツ)の動作の柔軟性が必要になってきます。演技で美しく前後開脚を魅せるためには、
- 前脚のひざを伸ばす
- 後ろ脚のひざを伸ばす
- 骨盤を床に沈める・後ろ脚の骨盤を正面に向ける
など高度な体のコントロールが要求されます。
床に足を滑らせて股さきのように左右の脚を前後に広げてもよいのですが、それだけではなかなか柔軟性が上がらないという人が多いです。また、力任せに股さきをすると肉離れなどの怪我を負ってしまい、かえって柔軟性が低下してしまったり治療が必要になることもあります。
前後開脚が苦手だという人、いきなり前後の脚をいっぺんにストレッチするのではなく、前後開脚の前脚と後ろ脚を分けてストレッチを行うとよいでしょう。
前後開脚の動作を大きくするためには、下記の筋肉の柔軟性をつけていく必要があります。
- 前脚のもも裏(ハムストリングス)
- 前脚のお尻の筋肉(殿筋群)
- 後ろ脚の骨盤前〜もも前の筋肉(腸腰筋・大腿四頭筋)
- 後ろ脚の内ももの筋肉(内転筋群)
まずは、前脚のもも裏、お尻、後ろ脚の骨盤前〜もも前、内ももの筋肉をそれぞれ個々にストレッチし、さいごに前後開脚の動作を練習するとよいでしょう、
前後開脚が硬い人の中には、もも裏の筋肉が硬く前脚の動作が苦手な人、骨盤前〜もも前の筋肉が硬く後ろ脚の動作が苦手な人など、様々なパターンがあります。
自分はどの筋肉が硬いのかを理解した上で、個々の筋肉の柔軟性をあげ、それから前後開脚の動作を練習していきましょう。
前脚のひざを伸ばす
前脚のひざを伸ばすには、ハムストリングスとふくらはぎの筋肉の柔軟性を高める必要があります。
ひざ裏だけを意識するのではなく、お尻の坐骨〜ひざ裏と、ひざ裏〜アキレス腱のラインが伸びるのを意識してストレッチしましょう。
もも裏のストレッチの方法
1.床に座った姿勢から一方の脚を前に伸ばします。
2.上体を脚の方に傾け、もも裏の筋肉が心地良く伸びているところで15秒~30秒キープしてください。
- 両手で足の裏を楽々つかめるくらいの柔軟性を目指しましょう。
- 足の裏を掴むのがむずかしい場合は、ストレッチを日々続けて、足首、指先、指の付け根というように徐々に遠くまで手が伸びるようにしていきましょう。
足の裏が楽々つかめる人は
足の裏が楽々つかめるという人は、仰向けでねた姿勢でタオルに足を引っかけて、太ももが90度からさらに120度160度と挙がるようにしていきましょう。
1.仰向けにねた姿勢で一方の足にタオルを引っかけます。
2.太ももを90度、さらに120度160度と挙げてみて、もも裏の筋肉が心地良く伸びているところで15秒~30秒キープしてください
- ふくらはぎや、お尻の筋肉が一緒にストレッチされてもOKです。
ふくらはぎのストレッチの方法
ふくらはぎの腓腹筋がひざを曲げる働きをしているため、前後開脚で前脚のひざを伸ばすためには、ふくらはぎの柔軟性を高めることも大切です。
1.タオルを足のつま先に引っかけてください。
2.タオルを引っ張り足首を曲げて、ふくらはぎの筋肉が心地良く伸びているところで15秒~30秒キープしましょう。
- このとき、足の指先だけでなく、足の甲から足首が曲げるよう意識することが大切です。
- 足の指先だけ曲がって足の甲から曲がっていない
お尻のストレッチの方法
前後開脚のときに骨盤が浮いてしまうという人は、前脚のお尻の筋肉と後ろ脚の骨盤の前の筋肉が硬い場合が多いです。
太ももの筋肉だけではなく、骨盤周りの筋肉もストレッチしていきましょう。
1.後ろ脚を伸ばした姿勢から前脚をアグラの形にして座ります。
2.この姿勢から上体を前脚の方に傾け、前脚のお尻の筋肉が心地良く伸びているところで15秒~30秒キープしましょう。
- このとき、前脚のひざを伸ばしてから上体をたおすと、さらにお尻の筋肉のストレッチの強度が高くなります。
後ろ脚のひざを伸ばす・骨盤を正面に向ける
前後開脚で後ろ脚のひざが曲がってしまう人や、骨盤が外に開いてしまう人は、骨盤の前〜もも前と内ももの柔軟性を高める必要があります。
骨盤の前(腸腰筋)のストレッチの方法
1.片ひざ立ちの姿勢をとります。
2.この姿勢から骨盤を前に移動して、骨盤前〜もも前の筋肉が伸びているところで15秒~30秒キープします。
- 余裕が出てきたら骨盤を前に移動した姿勢から、さらにひざを曲げていきましょう。
- 骨盤を前に移動した姿勢から、上体を横に傾けて、骨盤前〜腹部をストレッチするのも柔軟性アップに効果があります。
骨盤を前に移動した姿勢から、さらにひざを曲げる
骨盤を前に移動した姿勢から上体を横に傾けて、骨盤前〜腹部をストレッチ
もも前のストレッチの方法
前後開脚の後ろ脚の太ももの前側の筋肉の柔軟性もつけていきましょう。
1.一方のひざを曲げた姿勢から上体を後ろに傾けていきましょう。
2.上体を傾け、もも前の筋肉が伸びているところで15秒~30秒キープします。
- 肩が床に着けられない場合は、肘を曲げる、片肘を床につける、両肘を床につける、両肩を床につける、と徐々に上体を後ろに傾けられるようにしましょう。
- 前後開脚のためには、両肩を床につけた姿勢からもう一方のひざを抱え込めるくらいの柔軟性がほしいところです。
両肩を床につけた姿勢からもう一方のひざを抱え込める
内もものストレッチの方法
前後開脚の後ろ脚の内ももの筋肉の柔軟性がつくと、骨盤を正面に向けやすくなったり、ひざが伸びやすくなります。
1.右ひざを床に着いて、左脚をひざを伸ばしたまま外に広げます。
2.上体を前の方にひねり骨盤を床の方に落としてください。
内ももの筋肉が伸びているところで15秒~30秒キープします。
- ひざの内側に違和感や痛みが出る場合は他のポジションでストレッチしましょう。
腸腰筋のストレッチの際に、骨盤が正面の向きを意識するようにしましょう。
左右の腰骨が正面を向くよう注意しながらストレッチしましょう。
さいごに
どの筋肉が硬いかは個人差があり、ひとりひとり前後開脚ができない理由が違います。
今回紹介したストレッチを一つ一つ行ってみて、自分はどの動作が苦手でどの筋肉が硬いのかを自覚しましょう。
- 前脚のひざを伸ばす
→前脚のもも裏とふくらはぎのストレッチ - 後ろ脚のひざを伸ばす
→後ろ脚の骨盤前〜もも前ともも前のストレッチ - 骨盤を床に沈める・後ろ脚の骨盤を正面に向ける
→後ろ脚の骨盤の前〜もも前と内もものストレッチ、前脚のお尻のストレッチ
硬い筋肉があれば、まずはその筋肉を個別にストレッチして柔軟性を高めていきましょう。
ひとつひとつの基本動作のストレッチが組み合わさったときに前後開脚の柔軟性も上がっていきます。
怪我をせず、綺麗な前後開脚(スピリッツ)ができるようにしていきましょう。