体の硬い人にこそストレッチを行ってみてもらいたいです。
しかし、
- 立った姿勢で前屈して指先がヒザの少し下までしか届かない
- 床に両脚を伸ばして座ると骨盤が立たず上体が後ろに引っ張られる
- アグラ姿勢ができない
というような体の硬さの場合は、どのストレッチのポーズもきつく、どこからストレッチを始めれば良いのかわからず悩んでいる人が多いです。
このような人が、いきなり180度開脚で前屈ペッタリができるようになりたいと願って、開脚のストレッチを始めてもなかなか体は柔らかくなりません。
実際に体の硬い人にストレッチを指導する際は下記の三点に注意してストレッチのメニューを作成しています。
リラックスできるポジションのストレッチを行うこと
長座やアグラ姿勢で、骨盤が立たず上体が後ろに引っ張られてしまい床に座っていられないという人は、床に座って行う前屈系のストレッチから始めるのはなかなかむずかしいことが多いです。
上体を起こすために腹筋が力んでしまい、なかなか伸ばしたい筋肉に意識が向きません。
もも裏のストレッチを例に挙げると、床に座った姿勢、寝た姿勢、立った姿勢など、それぞれの姿勢でもも裏の筋肉を伸ばす方法があります。
ボブ・アンダーソン ストレッチング より
床に座れないという人は、椅子に座った姿勢や床に寝た姿勢で行うストレッチから始めるとよいでしょう。
床に寝た姿勢でのストレッチを行なって、柔軟性がついてきたら床に座った姿勢で、立った姿勢でというように段階的にストレッチの強度を高めていきます。
力任せに行わず、関節可動域に変化が出ているのを確認しながら行うこと
力を込めて頑張った分だけストレッチの効果を得たいものですが、頑張ったわりには柔軟性の変化が見られないということが少なくありません。
なるべく力みが入らないポジションでストレッチを行なって、1セット目と2セット目の柔軟性の変化を確認しながらストレッチしていきましょう。力みや反動をつけて無理やり行うストレッチ(スタティックストレッチ)は、柔軟性向上に繋がらないばかりか、肉離れや靭帯損傷などの怪我の原因ともなってしまいます。
はじめは単関節運動のストレッチから始めて、多関節運動のストレッチに移行する
単関節運動とは、一つの関節の運動のことをいいます。
ウエイトトレーニングを例に挙げると、レッグエクステンションというマシンで膝を伸ばす動作を繰り返して太腿の前の大腿四頭筋を鍛えます。レッグーカールマシンで膝を曲げる動作を行なって、もも裏のハムストリングスを鍛えます。
このような動作が単関節運動になります。
これに対して多関節運動というのは、スクワットのように脚全体の関節を使う動作のことを指します。
スクワット動作でしゃがみこんだ時に、股関節が前に曲がる(股関節屈曲)、膝が曲がる(膝関節屈曲)、足首が曲がる(足関節背屈)というように、骨盤から股関節、膝関節、足首全ての動作が連動する運動を多関節運動と呼びます。
開脚やアグラ、正座、しゃがみ込み、長座なども下半身全体を使う多関節運動となります。
立位体前屈・長座の場合
- 足首が曲がる(足関節背屈曲/下腿三頭筋の柔軟性)
- 膝が伸びる(膝関節伸展/ハムストリングス・腓腹筋の柔軟性)
- 股関節が前に曲がる(股関節屈曲/ハムストリングス・大殿筋の柔軟性)
などの動きの柔軟性が必要
開脚の場合
- 股関節を外に開く(股関節外転/内転筋群)
- 股関節を前に曲げる(股関節屈曲/ハムストリングス・大殿筋の柔軟性)
- 膝を伸ばす(膝関節伸展/ハムストリングス・腓腹筋の柔軟性)
- 骨盤を立てる(骨盤前傾/腸腰筋・大腿直筋の柔軟性)
- + 股関節を内・外に捻る、足首を曲げる・伸ばす動作
などの動きの柔軟性が必要
アグラの場合
- 膝を曲げる(膝関節屈曲/大腿四頭筋の柔軟性)
- 股関節を外に捻る(股関節外旋/小殿筋・中殿筋)
- 股関節を外に開く(股関節外転/内転筋群)
- 股関節を前に曲げる(股関節屈曲/ハムストリングス・大殿筋の柔軟性)
などの動きの柔軟性が必要
特に開脚前屈の場合は動作の種類が多く、体の硬い人が全ての動作をコントロールするのは難しいことが多いです。
まずは股関節を前に曲げるだけの動作を行う、まずは膝を伸ばす動作だけ行う、両方できたら股関節を前に曲げながら膝を伸ばす、というように徐々にコントロールする関節を増やしていくと柔軟性がつきやすいです。
綺麗な開脚ができるようになりたいという気持ちはとてもわかりますが、股関節開くだけ、前に曲げるだけといった基本の単関節動作で充分な関節可動域が得られていない場合は、単関節運動を組み合わせて応用して行う多関節運動である開脚前屈をいきなりやろうとしても難しいのです。
硬い人向けの実際のストレッチの進め方の例
ハムストリングスのストレッチを例に挙げて強度の高め方を紹介します。
あまり筋肉が伸びなくなってきたら、下記の写真のようにストレッチの強度を高くしていきます。
このホームページで紹介しているストレッチ動画では、強度が星一つのストレッチだと体の硬い人にも行いやすいです。
さいごに
体が硬い方には、まずは多関節運動ではなくて単関節運動のストレッチから始めることをおすすめしています。
初めは少し物足りなく感じてしまうかもしれませんが、強度が高すぎると怪我をしてしまうこともありますし、心地良く感じる範囲で行うストレッチは精神的な負担が少ないので継続しやすいです。
日々の体の変化を感じながら自分の体のペースに合わせてストレッチに取り組んでみましょう。