「アスレティックリハビリテーション」という言葉はまだなかなか日本の世の中には浸透していないかもしれません。
私も含めた日本体育協会公認アスレティックトレーナーは、アスレティックリハビリテーションを行う訓練を受けています。
従来の社会復帰を目的としたリハビリ(メディカル・リハビリテーション)に対して、スポーツ選手が競技復帰を目的として行うものをアスレティックリハビリテーションと呼ばれています。
メディカル・リハとアスレティック・リハの違い
メディカル・リハビリでは、日常生活動作(ADL:activities of daily living)が行えることを目標に、医師の画像診断等の検査後に理学療法や運動訓練を行っていきます。
しかし、スポーツ選手が競技復帰するにはこの体力レベルでは充分でありません。
スポーツ復帰のためには受傷前の高いレベルでの筋力、筋持久力、パワー、スピード、協調性などの体力の回復が必要となります。
メディカル・リハビリテーションの実際
・受傷後の応急処置(RICE処置や副木固定など)
・医師の診断
・急性期の症状から回復するための物理療法
(ホットパック、赤外線、電気療法、冷却療法など)
・他動的運動(マッサージ、ストレッチング、他動的可動域訓練など)
・自動運動(自動可動域訓練、筋力強化など)
トレーナーは選手の受傷直後に応急処置を行い、病院の医師に診断を委ねます。
医師の診断結果を元にリハビリを開始していきます。
現在の整形外科でのメディカル・リハビリは物理療法が主になっており、充分な他動的関節可動域訓練や筋力強化訓練を受けることができていないのが現状だと思います。
病院に来る患者が多すぎるために充分なリハビリが処置できないのかもしれませんが、とりあえずは痛みが無くなればリハビリは終了とされることが多いです。
日常生活は送れるものの受傷前の状態まで体が完全に戻っておらず不便を感じている人が少なくありません。
受傷前にはできていた正座ができない、片脚立ちでズボンが履けなくなったなど、できなくても日常生活は送れるのですが、受傷前にできていたことができなくなって小さなストレスを抱えたままとなってしまいます。
アスレティック・リハビリテーションの実際
アスレティック・リハビリでは、メディカルリハビリ後に(並行して)下記の訓練を行っていきます。
・関節可動域訓練
・筋力強化訓練(患部以外、患部周囲)
・筋持久力の訓練
・スピードの訓練
・協調性の訓練
・心肺機能の訓練
受傷前のトレーニングのデータがあれば、そのデータ以上に体力レベルが戻るように訓練をしていきます。
データがない場合は受傷していない健側の体力レベルを参考に訓練していきます。
日常生活レベルの体力のまま、いきなり試合に出場することは、充分なパフォーマンスを発揮できないばかりか、再受傷してしまうリスクが高まります。
関節可動域や筋力の回復だけではなく、各競技に必要な体力を回復させた上で競技復帰することが大切です。
さいごに
スポーツトレーナーや鍼灸師、理学療法士、整骨院、整体院など様々な業種がありますが、医師以外には診断の権利がありません。まずは医師に診断を委ねましょう。
医師の診断後、病院でのリハビリが充分でないと感じた場合は、他の機関に医師の診断結果を伝えて、リハビリをお願いすると良いでしょう。